NbSe3(ホイスカー)という繊維状物質が初めて合成されたのはそれほど昔のことではありませんが、その結晶構造、電気的・力学的特性に非常に高い異方性があることが分かり、固体物理学者の間で"低次元性物質"として有名になりました。 過去20年ほどの間に低次元性に由来する興味深い性質が研究されましたが、私たちの研究室も大きな貢献をしています。
現在では、この物質は電化密度波(CDW)という電子状態を取るモデル的な物質と見なされるようになりました。 CDWは低次元の電子系に特有の低温における秩序状態で、結晶格子の振動(フォノン)を媒介にして結合した電子-ホール対の凝縮によって発現します。 CDW状態への相転移の後、物質内部で一定だった電子密度は周期的変調を受け、波のような配置をとります。
超伝導に似て、CDWは微視的なメカニズムによって生じる巨視的な量子力学的現象であり、同じく研究対象として魅力的です。 これまでの研究により多くの性質が明らかにされましたが、閉じたループのトポロジーを持つ系がCDWの性質にどのような効果を与えるかは、議論され始めてから年数が経っていません。 閉じたループの上のCDWは、一個の電子がするように、自分自身と量子力学的な干渉をする可能性があります。 しかし、CDWの波は多数の電子が凝縮した集合的な存在であり、そのように巨視的なものが量子的な振る舞いをするという予測には疑問が伴います。この種の現象は巨視的量子干渉性(MQT)の問題として知られています。 私たちの発見したトポロジカル物質は、この問題を実験的に検証する糸口となります。。